「最近、親がふらつくことが増えて、転ばないか心配だから福祉用具を用意したい。」
「転倒してしまったので、その日のうちに福祉用具を用意したい。」
「ケアマネージャーから福祉用具の提案をされたけど、何を借りられるかわからないし、本人が拒否するのではないか心配。」
初めて介護について考えるとき、焦りや不安があるのは当然です。
しかし、急いでホームセンターやリサイクルショップで福祉用具を購入すると、結果的に損をしてしまうことも・・・
この記事では、福祉用具専門相談員として10年の経験を持つ私が、介護保険を使った福祉用具のサービスの全体像を解説します!
主な福祉用具サービス内容
まずは介護保険を使った福祉用具サービスの主な内容を簡単にまとめましたので、参考にしてみてください。
福祉用具貸与
福祉用具のレンタルサービスのこと。
要介護認定が付けば、最安1割負担でレンタル可能です!
レンタル料金は事業所によって若干の差がありますので、ケアマネージャーや包括支援センター、お近くの事業所にお問い合わせいただくと、カタログをもらえることが多いです!
以下にレンタル対象品目を簡単にまとめましたので、参考にしてみてください。
貸与品目 | 特徴 |
手すり | 工事不要の置き型手すり用途によって様々な形状をしており、ベッド用のものから便器を挟み込みように設置するものまである |
スロープ | 設置の際に固定不要のものゴム製の低い高さのものから、玄関からの出入りで使用する折りたたみタイプも |
歩行器 | 車輪あり、なしのタイプがある屋内外や使用するスペース、御本人の体格や身体状況にあわせせて選ぶ必要がある |
歩行補助杖 | 一般的にイメージする、1本脚の杖は対象外複数脚に分かれているものが多い一部松葉杖のような特殊な杖も対象 |
自動排泄処理装置 | 機械式で採尿するものを指す排便機能を有する機種は要介護4以上が必要 |
車いす及び付属品 | 通常の車いすの他、肘掛けや足置きを外し、乗り降りし易いものや電動タイプもある付属品は座面や背中のクッションが主に対象 |
特殊寝台及び付属品 | 電動ベッドを指すサイドレールを取付可能で、以下の機能のいずれか可能なもの ●背、脚の傾斜角度調整が可能 ●床板の高さが無段階調整できる 付属品はサイドレール、マットレスなどを指す |
床ずれ防止用具 | 床ずれを防止するマットレスのこと主にエアマットを指し、最近ではほとんどの調整を自動で行ってくれる、AI機能を搭載した商品もある単体でのレンタルも可能 |
体位変換器 | 寝返りを補助する用具クッションのような形状のものやシート状のものがある |
徘徊感知器 | ご本人が一人で外出してしまうと危険な場合や、ベッドから降りたときに転倒してしまう場合に介助者へ知らせるもの。 |
移乗用リフト | ベッドから車いすへ移るときなど、介助に非常に大きな力が必要な場合に用いる |
特定福祉用具購入
主に浴室で使用するものや、居室内に設置するポータブルトイレが対象です。
介護認定で最安1割負担で購入可能となっています。
年度ごと(4月〜翌年3月)に10万円分まで支給枠が与えられます。
毎年10万円の利用可能枠はリセットされるので、必要な用具が増えても追加で購入できます。
事業所によっては、購入前にお試し出来る場合もあるので相談してみましょう!
特定福祉用具品目 | 特徴 |
腰掛便座 | ポータブルトイレや、既存の便器の高さを補う便座を指す 体格に合わせた高さ調整ができ、安定した立ち上がり、座り動作をサポートする トイレまでの移動距離を短くすることで、転倒予防にも効果的 |
自動排泄処理装置の交換可能部品 | レンタル品の装置に取り付ける、受け口やホースを指す |
入浴補助用具 | ・シャワーチェア:体格に合った高さ調整ができる椅子 ・浴槽手すり:浴槽のふちに挟み込んで設置する手すり ・浴槽内いす:浴槽の中に置く踏み台および腰掛け台 ・入浴台:浴槽のふちに橋渡しする板。腰掛けて片足ずつ浴槽に入る動きが出来るため、跨ぐ動作が困難なときに有効 ・浴槽内すのこ:浴槽の床の高さを上げ、跨ぐ際の負担を軽減できる ・浴室内すのこ:洗い場の床の高さを上げるもの。 ・入浴介助ベルト:本人や介助者が装着し、入浴時の抱え上げの際に持ち手になるもの |
簡易浴槽 | 空気式または折りたたみ式で、簡単に設置・移動が可能な浴槽。取水や排水の工事が不要で、使用者がどこでも快適に入浴できるように設計されている。 |
移動用リフトのつり具部分 | レンタル品のリフトに取り付けるシートを指す |
レンタルは定期メンテナンスや故障時の交換が無償の場合が一般的なので、長い目で見るとレンタルのほうがお得でしょう。
また、レンタルの大きなメリットとして、身体状況の変化に合わせて福祉用具を柔軟に変更できることがあります。
例えば、初めは手すりだけで良かったが、後に歩行器が必要になった場合も対応できます。
住宅改修(注意点あり)
介護保険を使用して、最大20万円分までの工事が最安1割負担で行えます。
介護保険の対象となる種類を簡単にまとめましたので、ご自宅の工事が必要そうな場所の参考にしてみてください。
- 手すり取付け(屋内外)
- 段差解消(屋外であればコンクリート階段をスロープにしたり、1段の高さを低くする等、屋内の敷居を外しフラットにすることも可能)
- 床材変更(外階段にゴムマットを取り付ける、滑りにくい床に変えるなど)
- 扉変更(ドアの開く向きを変える、開き戸を引き戸に変える、丸ノブからレバーに変えることも可能)
- 和式便器から洋式便器へ取り替え
特に玄関、トイレ、浴室は転倒が多い場所として、注意すべき場所ですので日頃から危険がないか確認しておくと安心でしょう。
住宅改修の20万円リセットの注意点
住宅改修は特定福祉用具と違い、毎年20万円分の枠がリセットされるものではありません。
リセット条件は以下の2点です。
- 初めて住宅改修を行ってから、要介護度が3段階上がった時
- 住所変更がともなう転居(別荘や一度工事済みの家に戻る場合は対象外)
私もよく質問いただいていたのが「要介護度の3段階」についてでしたのでご紹介します。
要介護度は、以下のように要支援と要介護に分かれています。
- 要支援1、2
- 要介護1〜5
合計して7段階あるように思われますが、要支援1、2については1段階としてカウントされます。
例として
- 「要支援1」で住宅改修を初めて利用し「要介護2」で2回目の利用⇨2段階しか上がっていないためリセットはされない
- 「要支援1」で住宅改修を初めて利用し「要介護3」で2回目の利用⇨3段階上がったので20万円の枠リセット
このように複雑な部分がある制度ですが、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員がほとんどの手続きを行い、都度相談しながら進めていきますのでご安心ください。
【店舗で買う?】福祉用具を出来るだけ早く用意したい時
福祉用具を急いで用意したい場合、ホームセンターやリサイクルショップでの購入も一つの手段です。実際に、私が担当した方の中にも急ぎで福祉用具を買いに行った方がいらっしゃいました。
しかし、店舗購入することでデメリットもありますので注意しましょう!
依頼当日に福祉用具を納品可能な事業所もあり!
貸与事業所によっては、自社で在庫を持っている事業所もあります。
早ければケアマネージャーに相談した日にお試し納品ができる事業所もありますので、まずはケアマネージャーさんに急ぎで用意したいことをご相談してみてください!
店舗購入のデメリット
ホームセンターなどで福祉用具を購入する際のデメリットとして、在庫の中から適切なものを選ばなければならない点があります。
店舗によっては福祉用具専門相談員がいる場合もありますが、必ずしもそうではありません。
また、ご本人の体格や身体状況に合わせて、ご自宅の住環境を元に福祉用具を選ぶのが難しく、「急ぎで買ったけど使い勝手が良くなかった」「せっかく買った歩行器で転んでしまった」という方もいらっしゃいました。
当日対応可能な事業所もありますので、まずは包括支援センターや担当のケアマネージャーに相談してみましょう!
レンタルした福祉用具が合わない!本人の拒否や破損した場合
介護保険を利用した福祉用具サービスについてご紹介しましたが、使ってみたけど合わなかったり、ご本人に拒否があるケースもあります。レンタル品を壊してしまった場合の不安もあるのではないでしょうか?
福祉用具が合わない時
レンタルして使ってみたけど合わない、というケースも少なくありません。
実は福祉用具はいつでも変更可能ですのでご安心ください!
身体状況の変化に応じて福祉用具の変更も出来るようになっていますので特に期限の縛りなく変更できます。
また、ケアマネージャーや福祉用具専門相談員が訪問した際に、使い勝手が変わってきたなと感じた場合は、状況に合わせて提案してくれるので安心です。
拒否がある時
福祉用具レンタルではお試し利用が可能な場合が一般的です。
実際にわたしが担当した方の中にも「まだ福祉用具がなくても大丈夫」という方もたくさんいらっしゃいました。
お試し利用をしていただいたことで、日常生活で使用するイメージも明確になり、拒否もなくなり利用される方は多いのでご安心ください!
また、最近の福祉用具はオシャレなものも増えていますので、日常の相棒として気に入っていただける方も増えています。
相談段階から、ご本人に気に入っていただけそうな用具の選定も相談員の頑張りどころですので、お気軽に相談してみてください!
レンタル品を壊してしまった時
福祉用具は基本的に頑丈に作られていますが、長期使用による消耗は避けられません。
通常の使用範囲内での故障であれば、修理費や弁償の必要は無いことが一般的ですので安心して使用してください。
わたしも福祉用具専門相談員として10年勤めましたが、修理費や弁償を頂いたことはありませんでした。
まとめ
介護保険を利用した福祉用具サービスについて、簡単にご紹介しました。
これらのサービスをうまく活用することで、介護の負担を軽減し、安心して生活を続けることができます。
なお、詳細については各自治体や事業所によって異なる場合がありますので、具体的な利用を検討する際には必ずケアマネージャーや事業所に相談してみましょう。
この記事が皆さまの参考になれば幸いです。ご覧いただき、ありがとうございました!
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